原書刊行:2011年
様々な媒体に掲載された短編を集めた作品集。
初出:『Realms of Magic』(1995年)
グエンワイヴァーの小像が造られた際の物語。
エルフの王国、コーマンソー(Cormanthor)のブレードシンガー(*)、ジョシディアー・スタリム(Josidiah Starym)には、風変わりな友人がいる。元野伏りで魔法使いの人間、アンダース・ベルトガーデン(Anders Beltgarden)だ。ジョシディアーがその研究室をたずねると、美しい黒豹が檻に入れられていた。魔法使いは黒豹を使役し、いつでも呼び出せるように魔法の小像を作ろうとしていたのだが、ジョシディアーは豹の自由を奪う行為に猛反発する。一方、ここまで手間暇かけてきた魔法使いは作業の手を止めようとしない。
*ブレードシンガー(刃の歌い手)は魔法を剣にこめて戦う戦士。D&Dのルール的にはエルフ族限定のクラス(職業)です。
舞台:コーマンソー
初出:『Dragon Magazine』152号(1989年)
ミスラル・ホール(ミスリル・ホール)がドラゴンに奪われるよりも前、ブルーノー・バトルハンマー(Bruenor Battlehammer)の過去の物語。
ミスラル・ホールの地下深くで、ドワーフの一隊が双頭の巨人エティンに襲われる。30歳前後でドワーフとしてはまだ若者だったブルーノーは、3人の友人たちとともに密かに坑道の探索に向かう。
『ダークエルフ物語 ドロウの遺産』(The Legacy of the Drow - The Legacy)の第2章で、ブルーノーが大昔にゴブリンを見たと話すのは、このときの冒険のこと。
舞台:ミスラル・ホール(ミスリル・ホール)
初出:『Realms of Infamy』(1994年)
*『アイスウィンド・サーガ』シリーズ未読の方へのネタバレを含みます。
『アイスウィンド・サーガ』以降ドリッズトのライバルとなるキャラクター、アルテミス・エントレリの子供時代のエピソード。
9歳にしてカリムポートにやってきたエントレリは、貧民の暮らす通りをたちまち掌握した。それから5年にわたり、その通り支配することがエントレリにとって生きる術であり、虐待を経て砕かれた自尊心を回復する手段だった。
その彼の”王国”に、新参者が現われる。相手はエントレリのことを知っている様子だが……。
舞台:カリムポート
初出:『Realms of Valor』(1993年)
*『アイスウィンド・サーガ』シリーズ未読の方へのネタバレを含みます。
ミスラル・ホールの奪還直後。ドリッズトはシルヴァリームーンへの道中、オークにさらわれた村人たちの救出に手を貸す。救出は成功するが、村人とともに捕らわれていたゴブリンが姿を消していた。オークを追ってきた村人の一人、リコ・ペンガレン(Rico Pengallen)に要求され、ドリッズトはそのゴブリン、ノイハイム(Nojheim)を追う。このゴブリンとの出会いが、ドリッズトの価値観を大きく揺るがすことになる。
『ダークエルフ物語 星なき夜』(The Legacy of the Drow - Starless Night)の第3章で、ドリッズトがペンガラン(ペンガレン)という村を通るのは避けたい、と考えているのは、このエピソードと関連しています。
舞台:ペンガレン(Pengallen)、ミスラル・ホールとシルヴァリームーンの間の一帯
初出:『The Highwayman』(2004年)
*『ダークエルフ物語 暗黒の包囲』未読の方へのネタバレを含みます
ミスラル・ホールを旅立ったドリッズトとキャッティ=ブリーは、ウォーターディープにいた。かつて共に冒険したデューデルモント船長の海賊拿捕船〈海の妖精(シー・スプライト)〉号が入港し、二人は乗船を申しこもうと考えるが、”手土産”としてある海賊グループの捕縛を画策する。計画どおり標的のアジトに潜りこむのだが……。
デューデルモントとロビラードはじめ、シー・スプライト号の面々が登場します。
舞台:ウォーターディープ
初出:『Realms of Shadow』(2002年)
*『Servant of the Shard』未読の方へのネタバレを含みます
アルテミス・エントレリとヤーラクスル(ジャーラックスル)は、傭兵団を離れて放浪している。ダマラ(Damara)の都、ヘリオガバルス (Heliogabalus)にやってきた2人は、盗まれた像を取り返すという仕事を引き受ける。易々と盗賊の家に忍び込み、目的は果たされたかと思ったところで……。
滅びたはずの古代帝国ネザリルの復興勢力と、エントレリたち、そしてドリッズトたちが絡んでいく展開の始まり。エントレリも重要な変化を迎えます。外伝扱いで良いのかな? というようなエピソードです。
舞台:ブラッドストーン・ランズ(Bloodstone Lands)の街、ダマラ(Damara)の都ヘリオガバルス(Heliogabalus)
初出:『Dragons: Worlds Afire』(2006年)
ヴァーサ(Vaasa)のブラック・ドラゴン、アーシュラ(Urshula、Kazmil-urshula-kelloakizilian)が眠りから覚め、旅人たちや、ハーフオークの街パリシュック(Palischuk)を襲う。“ヴァーサの魔王”、リッチのジェンギ(Zhengyi)はアーシュラと手を結ぼうと接近するが、アーシュラは関心を示さない。一方、ガレス・ドラゴンズベイン(Gareth Dragonsbane)を中心に、ドラゴンとの戦いへの備えを強化した軍勢が力を増しているのも、ジェンギには目障りだった。
『The Sellswords - Promise of Witch-King』の前日譚。
正確な年代は不明
舞台:ヴァーサ(Vaasa)、パリシュック
初出:『Realms of the Dragons』(2004年)
*『Servant of the Shard』未読の方へのネタバレを含みます
ヘリオガバルスにいるエントレリとヤーラクスルは、街に商店を持つタズミケラ(Tazmikella)から依頼を受ける。タズミケラの友であり商売敵であるイルネザラ(Ilnezhara)が持つ縦笛を盗み出すというものだ。二手に分かれてイルネザラの屋敷に忍びこんだエントレリたちたが、家主の思わぬ正体が明らかになる。
重要人物(?)、イルネザラ、タズミケラと、ヤーラクスル、エントレリの出会いが描かれます。
舞台:ヘリオガバルス(Heliogabalus)
『Realms of War』(2008年)
オークのメニ-・アローズ部族とミスラル・ホールの戦争中、戦闘の落ち着いた冬。激しい戦闘が行われた場所にやってきたプウェントは、部下たちを死なせながら自分が生き延びたこと振り返り、悔いる。ちょうどそのとき、一人のオークの戦士が愛娘の亡骸を取り戻すため、同じ場所へ向かっていた。
年代は1371年初めの可能性もあり。
舞台:ミスラル・ホール(ミスリル・ホール)
初出:『Realms of the Elves』(2006年)
*『The Hunter’s Blades Trilogy』シリーズ未読の方へのネタバレを含みます
メンゾベランザンのバリソン・デラルムゴ家を離れ地上にいるトゥスン・アルムゴ(Tos'un Armgo)は、偶然にも意志を持つ剣「カージディア」を手に入れる。血に飢えた剣に導かれてオークを狩るが、次第にトゥスンとカージディアは互いを認め合っていった。シナファイン(Sinnafain)らムーンウッドのエルフたちは、その殺戮の跡を発見し、トゥスンの様子を探る。
一方、ドリッズトとイノヴィンディル(Innovindil、ムーンエルフ)は、ペガサスでソードコーストへ向かっていた。眼下の一帯で、族長を失ったはずのオークたちが内紛に陥ることなく統率の取れた動きを見せているのに気がつき、二人は不安を覚える。
コミックの『Cutter』にもつながるエピソードです。
舞台:ムーンウッド付近
初出:『Realms of the Dead』(2010年)
ケア・ディネヴァルの船乗りや魔法使いたちは、野伏りのラウンドアバウト(Roundabout)に雇われて、ラック・ディネシア湖畔の木立にやってくる。アイスウィンド・デイルのバーバリアンたちが「時知らぬ場所」イルラドゥーン(Iruladoon)と呼ぶその小さな森で、一行はこの世のものとは思えない光景や鳶色の髪の「魔女」、不思議なハーフリングの姿を目にする。
『Gauntlgrym』内で触れられるエピソードです。
舞台:アイスウィンド・デイル>ラック・ディネシア湖畔
初出:本書
*『The Pirate King』以降を未読の方へのネタバレを含みます。
かつての仲間たちと別れたウルフガーは、アイスウィンド・デイルのヘラジカ族のもとへ戻り、子や孫にも恵まれていた。100歳を越えて、さすがに身体も衰えていたが、部族の者に襲い掛かるツンドラ・イエティを相手に最期の戦いに挑む。
舞台:アイスウィンド・デイル